エイカレ2023 フォーラムレポート前編
次の10年の未来を創る 卒業生からのバトン
「営業女性(エイジョ)の9割が10年以内に現場から離れてしまう」という現実に危機感を感じ、2014年にスタートした「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」。これまでにのべ157社、962名に参加いただきました。積み上げてきた10年、多くの卒業生が現場で活躍し続けています。
10年目を迎えた2023年度のフォーラム(キックオフ)は4年ぶりに対面で開催されました。
本レポートでは、ゲストとして参加した卒業生のお話を中心に、「エイカレで得られる成長」についてお伝えしたいと思います。
「自分たちも変えられる」気づきと自信が生まれた日
2023年9月、東京都内で開かれた「新世代エイジョカレッジ フォーラム2023」には、7社、43名の営業女性(エイジョ)が集まりました。緊張した面持ちで会場に入ってきたものの、すぐに会話が始まり、名刺交換する姿や笑顔があちらこちらで見られました。
2日間開催されるフォーラムは、エイカレ2023のキックオフです。異業種他社のグループで取り組むワークショップやディスカッション、そしてエイカレ卒業生や第一線で活躍する方々の講演などを聞きます。
その後は各企業チームに分かれ、社内の課題発見、解決策の検討と実証実験、最終選考への審査、そして2月の最終発表(サミット)まで取り組んでいきます。
フォーラムの1日目は、異なる会社の人たちとグループを編成してワークに取り組みます。初対面ではありますが、さすが日頃から営業でコミュニケーションスキルを培っているエイジョの皆さん、会話の糸口を見つけるのも上手です。日常の業務では会うことのない、他社で活躍するエイジョ同士で話せることにも、楽しさ・刺激を感じているようでした。
試行錯誤の5カ月で、「私にも変革が起こせる!」と自信に
「エイカレで頑張ると、何が得られるんだろう?」
フォーラムには毎年、これまでにエイカレに参加した卒業生が登壇し、当時の経験やその後の仕事・プライベートについて語ってくれます。これからのキャリアに不安を感じている参加者にとっては、背中を押してくれる大きな力となります。
まず「エイカレで見えてきた 変革ストーリー」をテーマに登壇したのは、2022年度に参加したお二人です。
パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部
物流・ユニバーサルサービス統括部 アシスタントマネージャー 大澤妙子さん
日本イーライリリー株式会社 糖尿病・成長ホルモン事業本部 大石真愛さん
パナソニック コネクトの大澤さんは、参加当時、入社 8年目。顧客のありたい姿を把握し、最適な解決策を共創するための「 OODAループ化」に向け、 3つの取り組みを実施しました。
大澤妙子さん
「楽しそうだな、と思って社内で立候補をし、エイカレに参加しました。最初は自分に何ができるのか、不安もありましたが、意見を出し合っていくうちに気づいたのは『エイジョの活躍は私たちだけでなく会社全体、そして世の中の問題であり、みんなで解決していくべきことだ』ということです。実証実験では、社内の情報セキュリティなど様々な問題にぶつかりましたが、その都度、人事や情報セキュリティの担当者など、これまでつながりの少なかった部署の人たちにも協力を仰ぎ、最終的にはのべ295人をも巻き込んで実行できました。ファイナルに進めなかったのは残念でしたが、それだけの人を巻き込み、私たちでも会社を変えられる、という大きな自信になりました」
大澤妙子さん
「エイカレが終わった後、人事部のサポートもあり、エイカレ参加メンバーで社内のエイジョ・コミュニティを立ち上げました。現在は、40〜50人になり、情報交換をしたり、ランチ会をしたりしています。私も、出産を控えながら営業職を継続しています。エイカレ参加前は、このまま営業でいいのか悩んでいましたが、エイカレで他社の営業女性たちから多くの刺激を得たことで、続けていく自信になりました」
日本イーライリリーの大石真愛さんは、データを活用しながら自ら柔軟に考え、顧客にピッタリの提案ができる仕組み「カスタ myDr」に取り組みました。チームは、審査員特別賞を受賞。しかし、大賞ではない悔しさでメンバーが泣き崩れたというほど、思い入れを持って取り組んでいたそうです。
大石真愛さん
「チームメンバー5人は、部署も拠点も異なり、最初から全てオンライン上でプロジェクトを進めました。初対面のメンバーも多く、自分の仕事もある中で、実証実験の準備やその後の分析など、本当に大変でした。週2回くらいの定例ミーティングの予定でしたが、そのうち『空いている時間はとにかくオンラインで繋いで、できる人がやろう』というように変わり…。
『やるからには大賞を取ろう!』という思いで一緒に取り組んだので、審査員特別賞を受賞しても、悔しくてみんな号泣したんです(笑)。それくらいに熱く取り組んだ期間でした」
メンバー全員が遠隔という状況で、試行錯誤しながら取り組んだ大石さん。もちろんご自身の仕事も大切にしながらの取り組みということで、ハードな経験だったと思います。
参加後、大石さんにはどのような変化があったのでしょうか。
大石真愛さん
「正直、参加する前はこのまま営業職を続けていけるのかと不安もありました。キャリアも働き方も、行き詰まっているような感じを持っていたかもしれません。しかし、エイカレの実証実験に取り組む過程で視野が広がり、会社をより深く理解して、もっと自分たちから声をあげていこうと思えるようになりました。そしてエイカレをとことんやり切れたことで、自分自身の仕事もこだわってやり切る、という思いが強くなり、営業としてもっといい仕事をしたいと取り組み方が大きく変わりました」
大石さんのチームメンバーの振り返り記事もご覧ください。
SUMMIT2022_REPORT イーライリリー様インタビュー Vol.2 | エイカレ - 新世代エイジョカレッジ (eijyo.com)
「営業も会社もやめようと思った」けれど、エイカレ参加後、マネージャーに!
フォーラム2日目「卒業生による実証実験ストーリー」には、2022年度参加の2社にご登壇いただきました。
中外製薬株式会社
兵庫支店 神戸オンコロジー1室 小川優さん
人事部 ダイバーシティ推進室 室長 佐藤華英子さん
株式会社スタッフサービス
エンジニアリング事業本部 首都圏ITソリューションブロック IT日本橋オフィス 統括マネージャー 前原生奈さん
執行役員(エンジニア領域事業担当) 山﨑亮さん
中外製薬の小川優さんは、2022年度に「マネージャー2人体制による新しい顧客価値の創造」に取り組み、大賞を受賞した「チームFM」でリーダーを務めました。
小川優さん
「仕事が忙しくて最初のフォーラムは半日参加、メンバーとのやりとりも、ほぼオンラインという状況でした。実証実験をするときも、各部署の上司や関係者を説得するのは大変だったことを覚えています。しかし、周囲に理解して動いてもらうために、支店長など上の方にも相談したり、自分たちがいかに変化を起こそうとしているのか、などを一生懸命説明したりしたことは良い学びになりました。実際に社内のシステムを変えるきっかけも作れましたし、これまで『ダメだろうな』と聞いていなかった顧客に対し、自分が勝手に先入観を持っていたことにも気づきました」
同社人事部の佐藤華英子さんは、エイジョの自主性を重んじ、彼女たちの想いを問い続けながら後方で見守っていたそうです。
佐藤華英子さん
「本当に自分でやりたいのか、変えたいのかということを大事にしてほしいと常に伝えています。実証実験の相談に乗るときもありますが、『本当にそうしたい?本当にやりたい?』と何度も問いかけ続けます。エイカレでは、自分たちでやれる、変えられる、という「実感」を得ることが大事だと思いますし、それを経験して身についたことがエイジョの大きな成長につながります。会社としては、そこを期待して毎年参加しています」
スタッフサービス・エンジニアリングの前原生奈さんは、入社3年目の2022年度、エイカレに参加。『残業ゼロチャレンジ』の実証実験をおこないました。結果、残業は57%削減、成約数は140%に。残業を減らしても成果が出ることを証明しました。
今期から統括マネージャーに昇進したという前原さん。エイカレへの参加は、仕事への姿勢を大きく変えたと話します。
前原生奈さん
「エイカレは私にとってターニング・ポイントでした。正直、当時は仕事に忙殺され、自分のやりたいことも仕事の意味も見えなくなり、営業も会社もやめようと思っていました(笑)。エイカレの過程で自分に向き合う時間が増え、何がしたいのか、どんな価値を顧客に提供したいのか、ということを改めて見直すことができたのは大きかったと思います。
参加当時はリーダー職になったばかりで、チームの成果管理、自分の成果を上げることはもちろん、社内の他のプロジェクトにも入っていたので、1日24時間では足りないくらいでした。だからこそ、エイカレは、周囲を巻き込むことやアドバイスをもらったり協力してもらったりすること、タイムマネジメントなども一気に身につける機会になりました。
今では統括マネージャーとなり、今まで以上に仕事へのやる気を感じています」
スタッフサービス・エンジニアリングでは、前原さんをはじめ、エイカレ参加メンバーが多数昇格を遂げました。執行役員の山﨑亮さんは彼女たちの成長を促すような関わり方を心掛けていたそうです。
山﨑亮さん
「私は時折相談を受ける際、参加メンバーに対して『それをすることで何が変わる?』『何のためにやりたい?』と都度聞くことを心掛けていました。メンバーの思考のキャップ、感情のキャップを取り、できないと思っていることの制限をはずして、何かその先を見つけてもらうための役割に徹しました。
2022年度にエイカレに参加した10人は、その後3人がマネージャーに登用され、4人がリーダーとなりました。今は新しい役割を担い、それぞれ活躍しています。スケジュール管理、横連携のタスク管理と共有に加え、時間内に成果を出してやりきる“胆力”がついたと感じています。」
エイカレで実証実験をやり抜いた参加者は、ビジネス、マネジメントに必要なスキルと力を実践で身につけ、急成長していきます。
多様なメンバーで協働する力、共通理解の作り方、周囲の巻き込み方、マネジメント力…。「限られた期間で結果を出す必要がある」という実証実験は、机上で学ぶよりずっと、本人にも周囲にも影響を及ぼします。
自分のモチベーションアップだけでなく、自組織、会社全体も良い方向に変えていこうという意識が持てるようになる、視座を上げるプロジェクトでもあります。
実証実験に向けて、いよいよスタート!
卒業生たちの体験談は、今回参加したエイジョにも強く響いたようです。
参加後アンケートには
「実証実験を通じて『会社は変えられる』という言葉が衝撃でした」
「自身の営業活動にとっても意識改革があったということが、新鮮でした」
「人を巻き込むことが苦手なのですが、自分が主体となって変えられるという期待と不安が半々になりました」
などというコメントがありました。
フォーラムの2日間では、自分のライフキャリアデザインを描いたり、営業職やキャリアへの悩みについてディスカッションしたり、といったプログラムのほか、ネットワーキングのためのランチや懇親会なども行われました。他社のエイジョたちとの交流やワークを通し、最初は硬かった参加者の表情が期待と自信に満ちた顔へと大きく変化したのが印象的でした。
ここから約5カ月は、いよいよ各企業に分かれて実証実験へと動き出します。
さらにここから生まれていく新たな可能性と変革が楽しみです!
※エイカレサミット2023へのご陪席など、詳細はこちらからお問い合わせください。
https://eijyo.com/contact
取材・執筆 岩辺みどり(Encanta)
エイカレ2023の集大成、サミット(最終発表会)は2024年2月22日を予定しています。
サミットには、今期ご参加企業のほか、エイカレへの参加を検討されている企業様もご参加いただけます。以下のフォームよりお問い合わせください。
エイカレサミット2022
https://eijyo.com/contact.html