SUMMIT2024 REPORT【審査員特別賞チームインタビュー】
「言えない」「聞かない」のアタリマエを壊す。エイジョがつくる対話と心理的安全性
今回でフィナーレを迎えた「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」。11年を締めくくる「エイカレサミット2024」は、2025年2月21日、東京都内で開催されました。
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審査員特別賞を受賞したのは、日本イーライリリー株式会社のチーム「All right! Lilly!」。
彼女たちが取り組んだのは、営業現場で語られにくい「女性特有の体調不良」に対する、新たな対話のきっかけづくりでした。
「体調が悪いことを口にするのは気が引ける」「(上司からは)聞きにくいし、どう聞いていいのか分からない」。
そんな現場のリアルに向き合い、1枚のカードでコミュニケーションの機会を創出するという実証実験を展開。そのインパクトは社内外に広がりました。
センシティブで触れにくいとされていた問題に切り込んだだけでなく、「職場で弱みを見せてはいけない」という思い込みを払拭した試みが評価され、審査員特別賞を受賞。
本レポートでは、「All right! Lilly!」のメンバーと事務局の方々にお話を伺いました。

女性営業職と管理職の
「言わない・聞かない」を壊す
〜カード1枚でヘルスワークバランスを実現する〜
日本イーライリリー株式会社 All right! Lilly!
チームメンバー
糖尿病・成長ホルモン事業本部 末房沙織さん
オンコロジー事業本部 柳侑里さん
自己免疫事業本部 矢作菜摘さん
オンコロジー事業本部 米田麻衣子さん
ニューロサイエンス事業本部 池上美香さん
(写真、左から 所属は取材当時)
エイカレから広がる変化の波 私たちの実験は続いていく
―振り返って、受賞の感想をお聞かせください。
末房 受賞した時はもちろん嬉しかったのですが、その後の反響が大きくて驚きました。「この取り組みについてもっと知りたい」と声をかけられたり、「社内でこの結果を活かすことができないか」というような相談があったり…。私たちの実証実験はまだ続いているのだと感じて、もっと嬉しく思っています。
矢作 伸びしろの大きい課題に取り組んでいたこともあり、短期間での結果が形になって充実感があります。また、受賞後にたくさんの方から声をかけていただき、身が引き締まる思いがしています。
―テーマ決定やチームづくりに関して、どんな工夫がありましたか?
末房 「女性の健康」をテーマに据えるまでに、検討に検討を重ねました。初めは女性が長く働き続けられない原因のひとつとして、体力差や女性特有の疾患、更年期などがあるのではと考えましたが、そこは限定せずに、男性も女性も関係なく健康について話ができることをテーマにしようと整理したことで、合意形成できました。
矢作 前のめりに取り組むメンバーばかりでしたので「制度化されているものを壊したい」と言いながら、自分たちで一生懸命制度を作ろうとしていたこともありました。でも、期間の後半は目的に立ち返って議論することを意識するようになり、チームとして大きな成長を感じました。

働きやすい環境は一緒につくる 変化の兆しを実感できた
―実証実験を通して見えてきたことは何でしたか?
柳 見えない問題を抱えている方が多いのだと改めて思いました。「話し合うきっかけになりました」など、有意義に活用してくださったというコメントを非常に多くいただいたので、このテーマは間違っていなかったと感じました。
池上 根本にあるのは、上司と部下のコミュニケーションをしっかり取っていくことでした。実際に進めてみて、改めて、プライベートと仕事の境目をどう捉えるかは非常に難しい問題だと感じました。ただ、会社というチームの中で、ある程度、自身の健康について自己開示しながら、働きやすい環境をチームで一緒に作っていくという企業風土の創出に、大きく切り込めた実感があります。
―営業の仕事、また、ご自身のキャリアへの意識に変化はありましたか?
末房 MRの仕事は一人で完結することも多いので、チーム5人で話し合い、協力しあってひとつのものを作り上げていく経験ができたことには大きな価値があり、自分のキャリアの中で大きなターニングポイントになりました。
米田 エイカレに参加する前から営業を長く続けていきたいと思っていましたし、その気持ちに変わりはありません。ただ、他社のエイジョとディスカッションした際、中長期のキャリアを考えている方がいらしたので、数年後はどうしたいか、少し先のことまで考えるようになりました。
矢作 これまでは「与えられた環境でどう働くのか」が先入観としてあったように思います。しかし、エイカレの経験を通じて、通常の業務にあえて疑問を持ったり、改善点を意識したりしながら働くことが非常に重要だと気づきました。
また、恐れずに声を発することで、自分たちで環境を変えていけるのだということを体験でき、視野も広がりました。

声をあげる意義を体感し 「考えるクセ」もついた
―エイカレの経験は、今後のお仕事にどのような変化を与えてくれそうですか?
柳 チームで実験を進める中で、自分の得意・不得意がよく理解できたと思っています。自分の伸ばすべきポイントに気づけたのは非常に大きな収穫でした。
米田 プロジェクトを進める上での意見の集約方法や、効率的な進行方法を考えるようになりました。今後、社内でチーム単位で仕事をすることも多いので、そこでこの経験を活かしていきたいと思います。 また資料作成やプレゼンのポイントなどで新たな気づきも多く、業務で取り入れたいと思います。 これまでは対顧客という狭い視点で物事を考えていましたが、より広い視野で物事を捉える必要性も認識できました。
矢作 0から1を生み出していく経験を通して、「課題が本当にそこにあるのか」常に考える癖がついたと思います。気づいたこと、課題だと思うことも、これまではそのまま流してしまっていましたが、しっかり声を上げて、関係各所に協力を仰ぐことで変えていけるのだという経験はこれからも少しずつ生かし、会社の変革に貢献していきたいと思います。
社内に意見を言っても、変わらないと思っている人は私を含めて本当に多くいると思います。
でも、エイカレという貴重な機会を経て、本当は、小さなことでも大きなことでも、自分たちが変えていけるのだということを経験できました。その姿をこれからも見せていけるように頑張りたいと思います。
事務局の声
自分たちの手で創意工夫し、環境を変えられると知る機会
人事本部 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進 コーディネーター 安原 菜津子 様
2017年からエイカレに参加していますが、今年は、営業業務プロセスに関することではなく、女性の健康にフォーカスしたことが、例年との大きな違いでした。社内でも「面白いところに目をつけているよね」という声もあり、各部門で「取り上げていこうか」という声がたくさん上がっています。
通常、MRの仕事は、マーケティング戦略やプロセスに基づいて、進めていきますので、自分たちが何かを一から考える機会は少ないです。エイジョのプロジェクトは、実は自分たちが創意工夫できることが色々とある、環境を良くするための提案はいくらでもできる、ということを強く感じる機会となりました。
「自分たちで環境を変えられる」と実感したこと、その成長のプロセス自体がとても価値あるものでした。
キャリアの見通しを持つきっかけに
コーポレート・アフェアーズ本部 川副 祐樹 様
エイカレに参加したメンバーを見ていると、エイカレ後の活躍は目覚ましいものがあります。キャリアを変えていく人もいれば、同じキャリアの中でステップアップしている人もいて、それぞれのキャリアを真剣に考え、前向きに選び、進んでいます。
今回参加したエイジョたちにとっても「自分はどうしたいのか」、考えてもらう一つのきっかけになったのではないかと思いますし、今後も会社に対してどんどん提案をしてほしい。自分たちの働く環境や働き方は、自分たちで良い方向へと変えられると実感してくれたのではないかと思います。

変革の主語は「誰か」ではなく「私」。その第一歩を応援したい
All right! Lilly!のエイジョが示してくれたのは「声に出せなかったことに声を与える」だけでなく、「誰かが変えてくれる」という気持ちを「自分たちが変える」という行動にしたことでした。
営業職の可能性を広げ、企業文化に切り込んだ「All right! Lilly!」の挑戦。
それは、あらゆる職場における“見過ごされてきた課題”に、向き合う勇気とヒントを与えてくれます。
