EIJYO COLLEGE SUMMIT 2024 特別講演
営業の未来をひらく~エイカレ11年の軌跡とこれからの挑戦~
1000人を超えるエイジョが「アタリマエ」に風穴を開けた

「営業女性(エイジョ)の9割が、10年以内に現場から離れてしまう」という課題を解決し、さらなる活躍へとつなげるために始まった「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」が11年目でグランドフィナーレを迎えました。
2025年2月21日、最後のエイカレサミットでは
企画・運営を務めてきた株式会社チェンジウェーブグループの佐々木裕子氏による講演、特別審査員による総括も行われました。
「今こそ私たちが、営業のアタリマエをアップデートする」
11年間にわたり、営業職の女性活躍とボトムアップの変革を支援してきたエイカレ。その集大成である「エイカレサミット2024」は華やかに始まりました。
チェンジウェーブグループ
代表取締役社長CEO 佐々木裕子

■特別講演
実践的な変革経験を通じて、変革リーダーが生まれる。
変革は一朝一夕では叶わないが、着実に変化していく
エイカレは、一人の女性幹部候補の情熱からはじまった
新世代エイジョカレッジ(エイカレ)は、2014年、7社のダイバーシティ先進企業が集まってスタートしました。
「営業職の女性は、10年経つと1割しか残らない」という課題に取り組もうと始まった、のですが、実はそれだけではなかったんです。
私たち(チェンジウェーブグループ)は、当時から、大企業の女性幹部育成研修、経営者育成、若手リーダー育成をお手伝いしていました。その研修受講者の中にいたある女性が、育休を前にダイバーシティ推進のリーダーになった方だったのですが、育休中に考えたそうです。
「自社だけでなく、社会全体にインパクトを与えるダイバーシティ推進をしたい。中でも営業が抱える問題は深く、多くの企業で悩みは同じなのではないか」と。
そして、その方が企業のダイバーシティ推進室長や私共チェンジウェーブグループに提案をしてくださり、エイカレという形になってスタートしました。
2014年に第1回を開催し、7社25名の女性が参加してくれました。当時は異業種でチームを組み、営業職の女性にどのような課題があるのかを明らかにしたうえで、解決策を考える場としていました。

7時出社・22時退社、まずはこの「アタリマエ」を壊す
2014年参加者のプレゼン資料を見て、改めて驚いたことがあります。
当時、とある営業職の退社は夜9時。帰宅は22時を過ぎる、という長時間労働が一般的でした。独身・既婚を問わず、これは厳しい労働環境です。
また、営業で働く女性たちに対して、「営業職を続けたいか」について聞くと、多くの人から「やりきった感があるので、次は別のキャリアを考える」とか、「他の仕事を知らないとまずいのではないかと思う」という意見が挙がりました。
「管理職を目指したいか」という質問に対しては、男女で大きな差があり、この問題を解決する必要性が明らかになりました。
ここで明らかになった課題を解決につなげるため、「労働時間の短縮」、「営業力の向上」、「キャリアとプライベートの両立」の3つをエイカレの重要なテーマとし、管理職への道筋を明確化する取り組みも進めてきました。

エイカレの実証実験~現場で感じる違和感が変革のタネになる~
エイカレには11年間でのべ165社、1016名のエイジョが参加し、実証実験に挑んできました。
今日はその中から、特に印象的な実証実験をご紹介します。

2016年大賞受賞
チーム:なりきりんママ(キリングループ)
実際には子供がいないエイジョが 1か月間ママになりきり、時間制約のある働き方にトライするというもの。残業はせず、子どもを保育園に送り迎えする、急な病気への対応のため勤務中でも強制的に帰宅しなくてはならないなど、リアルな想定が特徴。
実験を通して、本人の意識変化、周囲との連係強化、効率的な働き方などにより残業時間 51%削減。労働生産性が大きく向上し、営業成績も全国平均を超えるという成果を挙げた。その後、 2019年には「なりキリンママ・パパ研修」として対象を拡大し、研修の形で全社展開。メディアでも多数紹介された。
現在では、育児だけでなく、介護、家族の病気を含め、多様な働き方に対する理解を実体験によって深め、働き方を見直すための人事施策となっている。
◼️ 担当制を壊し、 チーム営業へ 顧客ニーズを「おしながき」で見せる

2018年大賞受賞
チーム:チームCSK(中外製薬株式会社)
それまで常識とされていた、 1人の MR(製薬会社の営業担当)が 1担当先を持つ「担当制」の概念を打破。顧客のニーズに近い「お品書き」を提示するというアイデアを創出し、次世代型営業モデルは「コンシェルジュ型営業」であると定義した。実験の結果、営業実績は 106.3%になり、面談の質向上に伴って生産性も向上。お品書きによって顧客ニーズが掴めることもわかった。
◼️ 営業にアイデアを!持続可能な働き方を目指す

2023年大賞受賞
チーム:Cinderella(株式会社 明治)
昇格するには転勤がつきもの、営業は対面ありき、という食品営業に根強く残る「アタリマエの破壊」に取り組んだ。男女問わずイキイキと働ける、強い営業組織の確立と業績向上を目指し、メリットもある転勤の廃止ではなく「営業のリモート化」を選択。結果、売り上げは前年比 105%を達成した。ワークライフバランスの改善を立証しただけでなく、制度化に向けた課題を明確化。具体策の提案が高く評価された。
◼️ ライフプランを軸に長期的なキャリアプランを描く

チーム:エイジョ白書
異業種チーム(キリン、サントリー、日産、リクルート、IBM)
「数年先の未来すら描けない」「働き続けるイメージがわかない」のは自分たちの不安が見える化できていないからではないか、という気づきから、中長期のライフ/キャリアを書き出し、先輩や上司との対話を経てブラッシュアップ。育児が一段落した後をシミュレーションしたら「育児後もずっと同じ職位に留まるのは嫌だ」と意識が変化。固定観念を破り、営業部門で管理職になる!と宣言した。
また、同様の経験を後輩たちにもしてほしい、と「未来 SO-ZOパッケージ」を作成。
この実験から生まれた「ライフキャリアデザインシート」はエイカレで製品化され、その後もエイカレで活用されてきた。

◼️ 「皆のプラスになること」を意識して、 営業のアタリマエを変える

2023年審査員特別賞
チーム:笑ってぼたもちーず!(株式会社スタッフサービス)
長く働き続けるために、残業削減に資する取り組みを探索。人材派遣業界の「当たり前」だった「派遣社員が出勤する初日は営業担当者が同行する」という慣習を辞める実証実験を行った。実験の結果、開始同行件数は8割( 73件中 59件削減)削減し、1人当たりの労働時間を 13時間削減。派遣社員や顧客企業に必要な情報を正確に伝えられる仕組み・テンプレートを作り、業務の効率化に成功した点が評価された。実績においても、営業アクション数は 109%、就業機会創出数も 110%とセールスタイムを確保し、業績もアップした。
エイカレ後、チームメンバー 5人のうち 4人がリーダー職に。残る 1人も重要ミッションを担う立場になるなど、マネジメント層への入り口として役立てている。
一気にすべては変わらない。しかし、確実に変化は生まれる
11年の集大成として、参加されたエイジョの方々にアンケートを実施しました。母数は少ないものの、75%は営業を続けており、35%の方が管理職に昇進されているという結果でした。2014年の「営業を続けるのは10%」というデータに比べれば、非常に良い結果であると言えるのではないでしょうか。

Q.印象に残っていることは?
「会社を変える、動かす!ことに本気に取り組めたこと。」
「社歴が10年を超え、いつのまにか納得するのが上手になっていました。前提から疑い、改善していく事の楽しさと大変さを体感できました。」
「ゼロから課題を見つけ実証実験を行うという、普段の仕事をしているだけではできない体験をさせていただいたこと。」
「課題決めの際にたくさん意見も出し合い話し合ったこと。言葉の定義をチーム全員で揃える大切さ。」
「他社の営業職の方との意見交換が印象に残っている。近場の営業職の 働き方が当たり前化していたが、様々な意見や働き方を知ることで、将来の働き方の選択肢が増えた。」
Q.エイカレが今のご自身のキャリア等に一番影響したことは?
「会社を辞めようと思っていた中でエイカレに参加してマネージャーになる決断までして、人生を変えてもらいました。」
「俯瞰してモノゴトをみること、自分の意見や考えを発信していくこと、自身しか見えていない状況からまわりへベクトルを向けたり、本当に多くのことを学びました。」
「『女性だからこの職種を選ぶのは難しいかな…』といってキャリアを諦めることが無くなりました。」
「チーム企画へ挑む姿勢を上司に評価いただき、マネージャーの役割をいただけたこと。」
「営業職で活躍をしているたくさんの参加者の方々と交流して、営業職の楽しさを改めて実感できたこと(営業を続けようと思えたこと)。」
「思い立ったが吉日でやりたいことには果敢に挑戦していく勇気が必要と気付き、やりたいと思っていた部署に異動願を出して、新たな挑戦を叶えたこと。」
Q.今後のキャリア展望/目標があれば教えてください
「卒業後グループリーダー、部長と自身のキャリアを進めてきたので、後進の育成に携わるようなことも積極的に実施していきたい。」
「不安はあるが、営業の課長として一エリアを任されたい。女性が多い営業部署のため、将来この部署だけでも全国営業課長・係長の半分くらいは女性が担うことができればと思う。」
「自分より若い世代にも(自分のチームのメンバー)、自分らしく働けていると思ってもらい、目指したい憧れの存在になること。」
「来月から産育休に入り、来年からはワーママとしての新たなスタートが始まる。子育てしながらも自分らしくキャリアを積んでいける姿を後輩たちにも見せていきたい。」
11年を振り返って思うのは、「一気にすべては変わらない。でも、確実に変化は生んでいける」ということです。すべての変革は一人ひとりがご自身を信じ、自分のため、そして周りの人のために思い切ってチャレンジするということによってしか生まれないのだと感じています。
参加してくださったエイジョの皆様はもちろん、参加企業事務局、営業部門の上司・同僚、経営層の皆様がいかにこの変革を後押ししてくださっているかということを非常に強く感じております。この場をお借りし、改めてお礼を申し上げます。 ありがとうございました。
新世代エイジョカレッジは今回で最後となりますが、2025年4月からは「変革カレッジ」として、性別・職種を問わず変革の実践体験に挑むプラットフォームを始めます。
現場から主体的に変革を仕掛けられるリーダー人材を輩出する、また、どんどん実験していける「変革の場」にしていきたいと思っています。
また、意思決定層の多様化に取り組むため、女性経営幹部育成の異業種横断プログラム「Go, Engage, Transform!(GETプログラム)」も進めています。
「変革屋」として、これからも「目に見える変化」を生んでいきたいと考えていますので
皆様もぜひ、一緒に走っていただけたらと思います!


エイカレ閉幕によせて~特別審査員の皆様から

佐藤博樹氏
(東京大学名誉教授、中央大学大学院 戦略経営研究課フェロー)
待っているのではなく現場から変えていく。
「こういうことがあったらいいな」「これが変わったらいいな」と思っていることを、実際に「変えてみたらできた!」と、皆さんが会社や社会に示されたと思います。これを、これからも続けていってください。
また、会社からエイジョカレッジに参加されたのはほんの一部の方だと思います。こういう取り組みで学んだことが社内の他のエイジョにも伝わっていき、「現場から変えられる」ということが広がっていくよう、これからもぜひ取り組んでいただければと思います。

白河桃子氏
(iU情報経営イノベーション専門職大学 特任教授、昭和女子大学 客員教授、
千里金蘭大学 客員教授、ジャーナリスト)
今後もエイジョのスピリットは皆さんの会社の中で生き続けます。エイジョの何が素晴らしいかというと、女性は、日本のポテンシャルであり、最大の含み資産だということが、エイジョでしっかりと可視化されるからです。みなさんの試みのパワーは、本当に多くの人に伝わっていると思います。 ちょっと背中を押してあげるだけで、モヤモヤを抱えていた女性たちはこんなにパワフルになれる。パワーアップした彼女たちを見て、会社も動かされる。こんなにあの会社思いで会社を変えようと思って頑張ってくれるのだということが、会社に、社会に伝わっていくのがエイジョカレッジだと思います。

太田彩子氏
(株式会社ベレフェクト代表取締役/「営業部女子課」主宰)
本日、改めて「エイジョとは何者なのか」という問いを私の中で考えておりました。私の中の結論は明確です。エイジョというのは、バリュークリエイターなのだと。もちろん、見える数字(財務的価値)をエイジョはたくさん稼いでいます。けれど、見えない価値(非財務的価値)をも、同時にここからたくさん作り上げてきたのだと思います。
まさに「次世代への風穴を開けた行動」だと確信しています。
次世代に向けてベターな会社をつくっていくために、みんなで協力し合いながら、風穴を開け、突破し続けられる、そんな取り組みに期待し、応援しています。

浜田敬子氏
(ジャーナリスト・AERA元編集長)
25年この分野を取材してきていますが、課題が変わってきている部分と未だに変わってない部分があるということを改めて感じました。ただ、育児など、以前の女性の課題が、もう女性だけのものではないということも感じています。エイジョが今年で終わり、もっと幅広く対象を広げていくことは、時代の流れだと思いました。
今日は、みなさんの提案がどれだけ会社や社会に本気で受けられたのかどうかが、変化から変革につながっていく大きなポイントなのかなと思って聞いていました。
ありがとうございました。
11年間、エイカレをご支援くださいまして誠にありがとうございました!
これからの新しい「変革カレッジ」「GETプログラム」にもご期待ください。
これまでエイカレに参加いただいた企業一覧
(旧:ソフトバンクコマース&サービス)
キリンビール株式会社
(旧:JTBコーポレートセールス)
株式会社JTB商事
商船三井ロジスティクス株式会社
株式会社スタッフサービス・ホールディングス
株式会社スタッフサービス
住友電気工業株式会社
ソフトバンク株式会社
ダイキン工業株式会社
大同生命保険株式会社
武田薬品工業株式会社
中外製薬株式会社
帝人株式会社
帝人ファーマ株式会社
株式会社テクノ・サービス
株式会社デンソー
東罐興行株式会社
東急リバブル株式会社
東洋冷蔵株式会社
日産自動車株式会社
日清食品ホールディングス株式会社
日鉄ソリューションズ株式会社
(旧:新日鉄住金ソリューションズ)
日本アイ・ビー・エム株式会社
日本イーライリリー株式会社
日本たばこ産業株式会社
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
日本郵便株式会社
ネスレ日本株式会社
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
パナソニック コネクト株式会社
(旧:パナソニック システムソリューションズジャパン)
株式会社日立ソリューションズ
BIPROGY株式会社
(旧:日本ユニシス)
株式会社ファミリーマート
富士通Japan株式会社
(旧:富士通マーケティング)
株式会社 丸井グループ
三井住友カード株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
株式会社三井住友銀行
三菱地所プロパティマネジメント株式会社
株式会社 明治
株式会社リクルート
(旧:リクルートジョブズ、リクルートライフスタイル)
株式会社リクルートホールディングス
株式会社リクルートスタッフィング
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
リコージャパン株式会社
株式会社両備システムズ
