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エイカレ2024 フォーラムレポート後編
ロールモデルが語る、営業職からのキャリア構築

 

2024年9月、「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)2024」がスタートしました。
11年目を迎える今年のテーマは「今こそ、私たちが営業のアタリマエをアップデートする」
 
キックオフとなったフォーラム1日目には、異業種他社の参加者とグループを作り、互いに刺激を受けながら自分自身のライフキャリアデザインを描きました。
その過程では、自分の「ありたい姿」と目の前に見えている「現実」の間で、悩んだり迷ったりすることもあります。
 
そんなとき、エイジョの先輩はどう乗り越えてきたのか。
ヒントを得ていただくためのロールモデル・パネルディスカッションには、キリンビバレッジ株式会社の神元佳子さん、株式会社ニチレイの片岡恵美さんをゲストとしてお招きし、参加者からの質問に直接お答えいただきました。
 
モデレーターは、株式会社チェンジウェーブグループ・取締役副社長の大隅聖子。自身も営業としてキャリアを築き、事業開発やDE&I推進、経営を担ってきました。当時の経験も思い出しながら、「今だからこそ、エイジョに伝えたいこと」をお二人のゲストに伺っています。
 


キリンビバレッジ株式会社
執行役員 人事総務部長 
神元佳子様
1990年、キリンビール入社。九州支社で営業に配属となる。その後中国支社へ異動、広島流通部長などを務め、量販営業を担当した。2008年、キリンホールディングス人事総務部で多様性推進室長として継続就業支援や女性、リーダーの意識醸成に取り組む。2014年、キリンビールの営業部門に戻り、栃木支社長、広域法人統括本部長を歴任。その後、人事総務部長を経て、 2023年よりキリンビバレッジ執行役員・人事総務部長。

 


株式会社ニチレイ 
執行役員 ダイバーシティ推進部長
片岡恵美様
1994年、ニチレイ入社。営業部門でキャリアを積み、 2002年、マネージャーに昇格。 2007年から 2009年にかけて経済同友会、商社など社外に出向。 2010年、ニチレイフーズ研究開発部マーケティンググループに帰任。その後株式会社花乃菓房・代表取締役社長を務め、ニチレイフーズ・広域事業部生協営業部長に。北海道支社長、首都圏支社長を経て、 2020年には執行役員、 2022年には常務執行役員 ダイバーシティ推進部長に就任。 2024年よりニチレイ執行役員、ダイバーシティ推進部長。

 

モデレーター

株式会社チェンジウェーブグループ
代表取締役副社長 大隅聖子
 
 

<ロールモデルが答えるエイジョからの質問>

 

 

エイジョからの質問1

女性管理職が少ないうえに実際にマネジメントをされている方々があまりに大変そうで、自分にできるのだろうか、と不安です。管理職のやりがいについて教えてください。

 
一般社員だと愚痴でも、管理職なら経営課題。組織を動かすことができるのが管理職の醍醐味であり、大きなやりがいでもある
 
片岡:
現在の業務で、自社の管理職女性にヒアリングをしています。「管理職になってみて、今どういう心境か」と聞くのですが、皆さん、口々にこう言います。「もっと上を目指したい」と。「大変ではあるけれど、組織を動かすことができると知ったら、すごく楽しくなってきて、もっともっとチャレンジしたい」「私が部長だったら、もっとうまくいくのにと思うようになってしまいました」と。
 
ですから、あまり怖がらなくて大丈夫です。なった先に色々な景色が見えてくると思います。もちろん、大変なことはあります。ただ、得られることも多いです。
 
神元:
私も、片岡さんと同感です。「やりたいことがやれる」、これに尽きると思います。例えば、ある制度について話したとして、一般社員の立場だと愚痴や文句に聞こえてしまうことがありますが、部長や役員なら「経営課題」にできるのです。周りを巻き込んで「これをやりましょう」ということができるのが、管理職の醍醐味だと思います。
 
私は30代後半の頃、広島で流通部長になりましたが、営業で女性リーダーのイメージが持てず「イヤです」と言って怒られたことがあります。その後、できない自分に落ち込んだりもしましたが、リーダーとしての悩みは男女同じ、自分らしいリーダーのあり方でいいんだ、と知って楽しくなりました。
支社長になったときも、ビジョン達成のため、メンバーが目標達成し、成長する環境整備を率先垂範で行う、ということを経験できてから大きなやりがいを感じるようになりました。リーダーは人を幸せにできる仕事だと思っています。
 

 

エイジョからの質問2

年上の部下をマネジメントするときに、失敗したこと、うまくいったことは何でしょうか。また、そこから得たメソッドを教えてください。

 

わからないことは「わからない」と言う。すべてを自分が知ろうと思うこと自体が間違いです。

 
片岡:
北海道に支社長として赴任した時は、女性の支社長が初めてだったということもあって、年上の先輩たちは私をどう扱っていいかわからない感じでした。私も不安ですが、部下の方がよっぽど不安なのですよね。私も、最初は気を張っていましたが、やはり、こちらから歩み寄らなくてはいけない。
 
北海道のマーケットは私も全く知らなかったので、先輩方に素直に聞くことにしました。わからないことはわからないと素直に言うこと、そうすることで、同じ目線で一緒に課題を乗り越えていけます。年上の部下の方々とうまくやれるようになりましたし、支社長だからといって、全てを自分で知ろうと思うこと自体が間違いだと気づきました。
 

エイジョからの質問3

お二人ともずっと同じ会社でキャリアを積んでこられていますが、転職したいと思われたことはありますか?

 

1つの会社で多様な経験ができるのが大企業の良さ

 
神元:
私は転職をしたいと思ったことはありません。この会社が好きだ、ということもありますが、営業、人事、それぞれの異動で仕事も付き合う人も変わり、仕事のやり方も変わって、その中で成長させていただいたと思っています。同じ会社にいるとは思えないほど多様な経験を積ませてもらえるのが、ある程度規模が大きい会社のいいところです。
 
ただ、その中でも、特に今の自分を成り立たせているのは営業経験だと思っています。課題形成力、構想力、交渉力、決断力、巻き込み力、胆力ビジネスパーソンとして必要な力を身に付けることができる、営業は素晴らしい仕事ですよね。
 

 
片岡:
私はものすごく転職を考えました。でも、営業3年目の時に上司に言われたんです。「営業というもの、プロを目指しなさい。得意先からヘッドハントを受けるくらいになりなさい」と。そして、頑張ったら、本当にヘッドハントされたんです。その時、改めて「この会社の何が良かったのか」「なぜこの会社に入ったのか」を考え、残ることにしました。今は、踏み留まって良かったなと思っています。
 
考え方を変えるのも、決めるのも自分。この経験は何になるんだろう?とか、無駄な経験になるのでは?と思うことがあるかもしれませんが、振り返ると、「あの経験はこう生きたな」とか「無駄な経験ではなかった」とわかるんです。そもそも、正解のないVUCAの時代に、正解を選ぶことはできません。選択したことを正解にする、「自分がどうしたいか」が重要だと思っています。
 

 

エイジョからの質問4

子どもが小さくて残業ができません。自分なりには頑張っていて、上司も認めてくれているものの、自信が持てずにいます。自分を認めて、モチベーションを上げる方法があったら教えてください。

 

人と比べず、自分の目標を大切にする。自分にできたことを見つけていく

 
片岡:
人生は常にフルスロットルというわけにはいきませんよね。100キロで走る時もあれば、80キロぐらいで行こう、っていう時があってもいいと思います。
人と比べると苦しくなります。自分がこの1年、これだけは必ずやり遂げよう、という目標でもいいし、その手前のプロセスでもいいと思うのですが、上司の方とそれをしっかり握って、成長を見ていただくというようなことでもいいんじゃないでしょうか。
 
神元:
できなかったことを考えると辛くなってしまいますよね。できたことを探して、たくさん並べてみるのがいいと思います。昨日何ができたかな、とか、あれをやったら○○さんがすごく喜んでくれたな、とか、一つひとつ何か自分で見つけて、自分を奮い立たせるということなのではないでしょうか。
 

 

これからのエイジョのキャリアを考えるヒント
「完璧であろうとしなくていい」そして「決めるのは、自分」

 
大隅:
私も営業としてキャリアを構築してきましたので、エイカレには強い思い入れを持っております。エイカレからたくさんのリーダーが生まれてくれたら、と願っていますが、お二人は、これから女性管理職が増えていくために何が必要だと思われますか。
 
片岡:
あくまで「傾向」なのですが、女性に「管理職になぜならないのか」と聞くと、「あれもできてない」「これもできてない」と、できてないことを並べてしまう。「あれを勉強してからでないと」「これができるようになってから」と言うのは女性の傾向です。男性は、できていなくても管理職になります。それで、できるようになっちゃうんです。なぜかというと、必要なスキルは実践で身につけられるからです。それは男性も女性も変わりません。できるようになってから、と後回しにするのは、時間がもったいないと思います。
 
神元:
今のお話にはすごく共感します。女性は120点できてからやっと手が挙がるけれど、男性は70点くらいでたくさん部長になっている、と、昔、役員に言われたことがあります。そのとき70点でも経験すれば150点になりますから、機会を失うのはもったいないと強く思います。
 

 
大隅:
お二人のお話を伺っていると、「完璧でなくてもいい」と決めてとにかく始めてみる、が大事だと改めて感じますね。他にも、何か心がけてこられたことはありますか?
 
片岡:
日々一つひとつ積み上げていく「信頼の貯金」は大切です。ただ、一方で私は、いったんその貯金を取り崩すことがあってもいいと思っています。全員が全員、フルスロットルでアクセルを踏み続けるわけではありませんから、速度を緩める時もあります。組織は組み合わせで成り立っていますから、また、アクセルが踏めるときになったら、改めて、積み上げていけばいいと思うのです。
 
私は入社3年目くらいまでの間、規模の小さな仕事をたくさん任されました。最初はこんな仕事は「重要ではない」と思っていたのですが、それは自分が勝手にそう判断していただけでした。実はそうした小さな仕事を丁寧に、きっちり仕上げることで信頼を得ることができたんです。その後、海外出張の計画が舞い込んだときも「女性の海外出張は前例がない」と一時は却下されたのですが、得意先の課長を味方につけたことで会社が許可してくれました。
 
視点を変えると、違ったものが見えてきます。自分の思い込みで可能性の蓋をしないこと、できない言い訳をせず、できるために何をするか、ということは大事なんじゃないかとも思っています。
 
神元:
女性の管理職と話すと、肩に力が入りまくっている人が多いと感じます。リーダーになったら正しくあらねばとか、きちんとしなきゃいけない、間違っちゃいけないと、肩肘を張っている状態。でも、リーダーもいっぱい失敗して、いっぱい怒られているのです。皆さんも勇気を持って、こっちの世界に入ってこられたらいいなと思います。
 

「営業」は、多くの力を得られる仕事
自分自身の可能性をもっと広げてほしい

 
大隅:
最後に、エイジョの先輩として参加者の皆さんにエールをいただけますか。
 
片岡:
営業は、課題発見力やそれを解決するための構想力が身について、何よりも社外の人と交渉して「うん」って言ってもらってそれを実現していけるーー。そんな素晴らしい仕事です。ですから、営業力を身につけた人はどこに行ってもきっと活躍できます
皆さん、セールスのビジネスパーソンとしての力をつけて、これから営業の世界でもいいし、違う世界を選んでもいい。素晴らしい人生を送っていただきたいなと思っています。
 
神元:
営業は、数字だけで判断されると思われがちなところもありますが、実は色々なスキルをたくさん見つけて身につけられる職種だと思います。
自分自身にもっと期待していいんじゃないでしょうか。一段ずつでも登っていくと、いずれ見たこともない景色が必ず見えてきます。勇気を持って、一段上に登ってみていただけたらと思います。
 
大隅:
大変エネルギーのある、力が湧いてくるメッセージを頂きましたが、同時に、お二人がとても自然体というか、自分らしくいらっしゃるところが印象的でもありました。
片岡様、神元様、本日は本当にありがとうございました。
 
 
 
たくさんのエールを先輩から受け、異業種他社の参加者とのディスカッションで熱量を上げ、いよいよ2024年度のエイカレがスタートしました。
ここから約半年間、企業ごとのチームで実証実験に挑むことになります。
今年はどんな「変革」が生まれるのか、期待と同時に、今期参加のエイジョにとって、エイカレが自己変革のきっかけにもなるよう、心から願っています!
 



エイカレ2024の集大成、サミット(最終発表会)は2025年2月21日を予定しています。
サミットには、今期ご参加企業のほか、異業種プログラムへの参加を検討されている企業様もご参加いただけます。以下のフォームよりお問い合わせください。

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