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EIJYO COLLEGE SUMMIT 2018 

2019年2月15日、「新世代エイジョカレッジ・サミット2018」が開催されました。
2019年4月、働き方改革関連法が施行され、多様な働き方を選択できる社会の実現に向け、また少し時代が進みました。
しかし、働き方改革は単なる残業時間削減ではありません。
選ばれる営業、顧客価値を出せる営業であり続けるために、ビジネスモデルも変わる必要があります。

5期目となる今年は、「破壊と創造」をテーマに137名のエイジョたちが「当たり前」を疑い、
次世代の営業モデルとマネジメントの創出に本気で向き合いました。

今回のサミットは、フォーラム部門から実証実験の一次審査、二次審査を勝ち抜いたファイナリスト5チームと、
異業種提言交流プログラムで優秀賞受賞チームのプレゼンテーションおよび表彰を実施。
同時に、変化が激しい市場にあっても業績、組織コンディション共に上げられる営業管理職の特徴と、
ダイバーシティが営業組織に与えるインパクトを分析した「エイカレ白書」を発表し、27社約300人が集まりました。

エイカレ白書2018

エイカレ2018参加企業および過去参加企業の営業管理職161名を対象に調査を実施。
市場変化のスピードが速まる中、次世代型営業管理職に求められる行動や役割を分析し、発表しました。
 

エイカレ白書2018の目的

  • 変化が激化する市場にあっても、
    業績も組織コンディションも上げられる営業管理職の特徴とは
  • ダイバーシティが営業組織に与えるインパクトとは 

まず市場変化のスピードに対する営業管理職の認識についてアンケートを取ったところ、約65%が2年以内に構造変化が訪れると回答しました。市場変化のスピードが速い中で、エイカレ白書では「業績」と「組織満足度」に注目。どのようなことが影響するのかを調査したところ、以下5つのポイントが浮かび上がってきました。

  • 1)柔軟な働き方の実現が、「業績」と「組織満足度」双方を上げる
  • 2)メンバーが自分で営業の型を考えるスタイルのほうが「業績」につながる
  • 3)時短勤務者や育児・介護中のメンバーの有無は「業績」に影響しない(むしろ若干上がる)
  • 4)管理職の情報アンテナの広さと戦略策定時間の長さが「組織満足度」を上げる
  • 5)部下の人数と育成対象人数を少なくすることが「組織満足度」を上げる

 
エイカレ白書の設計段階からアドバイスをいただいた特別審査員の佐藤先生からは、これを実現していくために企業ができることは以下2つだと語りました。

管理職の登用基準→

仕事ができるのは当然として、部下をマネジメントでき、かつ戦略を立てられる、つまり概念化する能力のある人材を登用することが大切。
 

管理職の時間の使い方→

管理職、とりわけ課長では、プレイングマネージャーとしての役割もあるが、プレイヤーとしての仕事が全体の4割を超えないようコントロールすることが大事。言い換えれば、戦略を立てる・部下を育成するなど、マネジメントする時間を6割以上取れるようにすることが不可欠。


メンバーだけでなく、管理職が市場変化のスピードについていくために何ができるのか、次世代の営業の在り方、組織の在り方を示唆する結果となりました。

AWARD ファイナリストプレゼンテーション

フォーラム部門15社24実験、異業種交流提言プログラム部門8社3チーム。全27チームの中から、2回の事務局審査を経て、フォーラム部門ファイナリスト5チーム、異業種プログラム部門からは優秀賞を受賞したチームがプレゼンテーションを実施。今期のテーマは自分たち、営業の「当たり前」を疑い労働生産性と顧客価値を追求する「次世代型営業モデル」の創出です。以下5つの審査基準によって、外部有識者ならびに会場票から、大賞と審査員特別賞が選ばれました。


審査基準

  1. 破壊と創造:営業の当たり前について、課題を適切に把握し、破壊と創造にチャレンジしている
  2. 労働生産性:実験開始前後/前年同月比で定量的に比較し、労働生産性が落ちていない
  3. 顧客価値:より高い顧客価値の提供が出来たか・その可能性があるか
  4. 巻き込み力:個人だけではなく上司や組織等のサポートが得られている
  5. 汎用性がある:組織、業界を超えて全体に広がりうる

 


フォーラム部門

チームCSK / 中外製薬株式会社


審査員と会場から最も評価を得たチームCSKが大賞を受賞しました。
チームCSKは、製薬業界の常識である1MRが1担当先を持つ「担当制」の概念を壊すことを目指し、顧客のニーズに近い「お品書き」を提示するというアイデアを創出。これからも価値ある情報を提供できるMRが求められるという顧客ニーズを捉え、次世代型営業モデルを「コンシェルジュ型営業」と定義したことが背景にあります。
 
実験の結果、営業実績が106.3%向上、面談の質向上に伴う生産性が向上。そして、お品書きに掲載された人、お品書きを使用する人の双方にメリットがあり、お品書きによって顧客ニーズが掴めることもわかりました。
審査員からは、通常は担当者リストと呼ぶものを「お品書き」と名付けたことによるインパクトの強さ、社内の業務効率と同時に顧客の業務効率化や満足度の向上にも繋がる提言内容だった点が評価されました。更に、今後の展開として、「お品書き」を活用した顧客のニーズを把握するデータベースを構築し、分析することによって、企業の業務力向上や営業の自己成長に繋がる点も評価されたポイントでした。

受賞したチームからは、「感無量という言葉に尽きる」という喜びの言葉と共に、働き方改革では短時間労働に注目が集まりがちなところを、視点を変えて、楽しんだり、質を向上させることにフォーカスした実験を行ったというコメントがありました。

FJM WAY / 株式会社富士通マーケティング


特別審査員の皆様が議論した結果、取り組みが非常にユニークで世の中に発信すべきだと考えたチームがあったことから、今期は審査員特別賞を新たに設けることとなりました。

受賞したFJM WAYチームは、「営業はスーパーマン」という当たり前を覆し、もっと顧客に寄り添い「顧客の期待を超える提案」をしたいという想いから、「営業分業化モデル」を提案。具体的には、新たに営業を支援するコンシェルジュを設立し、営業の負荷軽減や時間創出ができるか実験しました。実験の結果、92時間の営業時間を新たに創出したことに加え、対応スピード向上によるお客様評価の向上、顧客への新たな付加価値提供を実現しました。
審査員からは、以下の3つの評価ポイントが示されました。
 

  1. 育児や介護により勤務制限のある社員やシニア層等、多様な人材が活躍できる仕組みと連携しながら、営業の仕方を変えていく点
  2. コンシェルジュを設置することが、若手の営業がベテランから学ぶ成長の機会にもなる点
  3. 最終的に会社に具体的に提案しており、実際に動きそうである点

【FINALIST】

 
営業は日々の顧客対応に追われ、スキルアップなど視座を高める活動を行えていないため、週1日をエイカレの日と設定し業務から離れる
 
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顧客営業は対面のみという文化・風土に対して、オンライン面会の導入と営業時間の定時終わりにチャンレンジ
 
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1日の拘束時間が長いという当たり前を破壊するために、週2日8時間勤務トライアルを実施し、時間の使い方を意識してもらう

TEAM EVOLUTION / キリンビール株式会社 / KDDI株式会社 / サントリービール株式会社 / サントリーフーズ株式会社(順不同 / 敬称略)


今期の異業種交流提言プログラムのテーマは、「次世代型営業マネジメントモデル」の提言。今期はテーマの難易度も高いことから、例年以上のチャレンジになりました。

優秀賞を受賞したTEAM EVOLUTIONは、次世代型営業マネジメントモデルを「【対面】【高頻度】【ポジティブ】フィードバックの仕組み化」と設定し、「月1ワンワンデー」と「ポジティブ広場(PP)」の2つの施策を提案。単なるフィードバックではなく、具体的に3つの観点を提示し、それぞれについて定性的・定量的に実証した点が評価されました。サミット当日は審査員からの質疑に応じて、テレワークと対面の合わせ技であること、ポジティブフィードバックは褒めて甘やかすのではなく、前向きな伝え方がポイントであることが、説明されました。

サミットの1か月前に開催された最終審査において経営者から「わかっているけれども、できていないことを突き付けられた」とコメントがあったように、次世代型と言いながら、原点に立ち戻る提言内容になりました。

 

小田 文子 さま

経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長
 

佐藤 博樹 さま

中央大学大学院 戦略経営研究科 教授

 

白河 桃子 さま

少子化ジャーナリスト・作家・相模女子大学客員教授
 

太田 彩子 さま

一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事


ゲストセッション

 
エイカレサミットでは、毎年有識者の方をお招きし、基調講演をいただいています。変化の激しい時代、どのように先を見据えていけば良いのか。過去2年はマクロの視点でテクノロジーがどのように変化していくのかについてご講演いただいてきました。
一方、変化が激しいからこそ、かえって原点に立ち戻り、基本を磨かなければならないことも多いはずです。例えば「人を動かす」力。営業の本質でもある「どのように相手に物事を伝えるか?」の根底にも、コミュニケーションの力があります。多様な顧客のニーズに対して、どのようにコミュニケーションの力を磨いていけば良いのでしょうか。

今回のエイカレサミットでは、Yahoo! JAPANの企業内大学であるYahoo!アカデミア 学長の伊藤羊一さんに、ビジネスコミュニケーションの極意と、マネジメントにおけるコミュニケーションの極意についてお話しいただきました。
伊藤さんはプレゼンテーションについて「 コンテンツ半分、プレゼン半分」と語ります。コンテンツそのものが優れていても、きちんと熱意を持って伝えなければ、思いを伝えることは叶いません。
では、何のために伝えるのか。それは「相手に動いてもらう」ためです。
 

伊藤さん : どうやったら上手く話せるか?ではなく、どうやったら聞き手が動くか? これだけを考えてください。大前提は2つ。1つは「相手のことを考える」。もう1つは「どこに動かすか考える」です。

 

伊藤さんが語る「 聞き手を動かす」5つのプロセスは以下の通り。
  1. ATTENTION 注目する
  2. INTEREST 関心を持つ
  3. DESIRE いいね!と思う
  4. MEMORY 記憶する
  5. ACTION 行動する

 
マネジメントの役割は「チームをゴールに導く」こと。そのために必要な要素は3つあります。
 

  • ゴールをチームに共有する
  • プロセスを明確にして導く
  • チームの力を最大化する

 
この中で特に大事なのが3つ目。では、どうすればチームの力を最大化できるのでしょうか。1つは「安心・安全な職場にする」、つまり会社に来たくなるような職場にすること。もう1つは「個人のパフォーマンスを最大化する」ことです。
 
個人のパフォーマンスを最大化するために何ができるのか。そのキーワードが「1対1」と1対1×n」です。
 

伊藤さん : 個人のパフォーマンスを最大化させるために、チーム1人ひとりと「1対1」のコミュニケーションをする必要があります。これが「1対1×n」。これをどれだけできるか。Yahoo!では、定期的にメンバーと1on1ミーティングをしています。
メンバーそれぞれで、受け取り方が異なります。進捗会議などで「1対n」のコミュニケーションをしていても、マネジメントの意図がきちんと伝わっているとは限りません。1対1でフォローしていかなければ、個人のパフォーマンス、ひいてはチームのパフォーマンスを最大化するのは難しい。だから「1対n」と「1対1×n」が大事なのです。
 
講演中はエイジョだけでなく陪席された管理職の方々も、熱心にメモを取る・スライドを写真に撮るなどの様子が見られました。
 
  • マネジメントという観点でのコミュニケーションを取らない上司に対して、部下から働きかけられることは何でしょうか?
  • 若手管理職が10〜20歳年上の部下を持つ組織が多く存在しています。そういう組織体でも、これらのマネジメントは発揮できますか?
  • 頻繁な1o1がありますが、量が質につながっておらず、やや苦痛です。コミュニケーションやマネジメントの質を上げる極意を教えてください。

 
など具体的な質問も数多く寄せられ、大きな拍手に送られながら講演は締めくくられました。


EIJYO COLLEGE SUMMIT 2018 総評

 

審査員総評:中央大学大学院 戦略経営研究科 教授 佐藤 博樹 様

今回の実験では、これまでなかったものとして、効率を上げて働いた結果、生み出した時間をどう使うのか?というものがありました。今の仕事に必要な勉強をすることも大切です。しかし、もう少し先のイメージを持ち、今の仕事から少し距離を置いて世の中の動きを知ることが大事になります。異なる業界の人と交流の機会を作るなど、すぐに結果が出るわけではありませんが、予測のつかない時代において重要になってくるはずです。ぜひエイカレを終えた後も、成長し続けていってください。


閉会挨拶:実行委員代表 キリン株式会社 人事総務部 多様性推進室長 岩間 勇気 様

エイカレには参加者の「研修」だけでなく、社会に風穴を開ける「変革」という2つの意味があります。エイカレの場で、自社や業界の抱える課題を明らかにすることは、プレッシャーやある種の恥ずかしさもあるかもしれません。しかし1社が良くなるだけでなく、同業他社、ひいては日本産業界全体が変革していく可能性が充分にあります。
エイカレという社会変革の場が、会社を鍛え、社会全体を良くするきっかけになれば、事務局としてこんなに嬉しいことはありません。来年度以降も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

GALLERY

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