今求められる営業変革と女性社員が「脱皮する」機会 太田彩子様インタビュー

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今求められる営業変革と女性社員が「脱皮する」機会
太田 彩子 様 インタビュー

 
「営業の女性は入社10年経つと9割が現場を離れてしまう」という状況を何とかできないか。それが2014年、新世代エイジョカレッジ(以下、エイカレ)が発足した際の問題意識でした。
その後、女性活躍推進から多様性推進へと、多くの企業において取組みが進められています。
 
エイカレの事務局を務めるチェンジウェーブでは、研修や社内変革プロジェクト、講演などの形で企業の多様性推進をお手伝いさせていただいていますが、コーポレートガバナンスコード改訂や世の中の変化を受け、女性活躍推進がさらに重要視されるようになった、また、目標値だけでなく、実際に「どのような人材がどんなポジションで活躍しているか」がシビアに見られるようになりつつあることを日々強く感じています。
 
では、実際に女性社員を育成し、登用していくためにはどのような方法が有効なのか。
営業分野におけるジェンダーギャップ解消を目指す活動を展開する、一般社団法人「営業部女子課の会」の代表理事であり、上場企業の取締役(社外、社内ともに)という立場で8年以上経営に携わっている太田彩子様に、営業部門の女性活躍推進の現状と課題についてお話を伺いました。


太田 彩子
一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事 兼  Founder
株式会社ベレフェクト 代表取締役

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女性活躍は本当に進んだのか?

 
エイカレ事務局・株式会社チェンジウェーブ (以下、チェンジウェーブ):
太田さんはエイカレの審査員も長年お引き受けくださり、企業・営業部門の課題感やエイジョ(営業女性)たちの成長を見続けていただいています。
「女性活躍推進」という観点では、現状をどうご覧になっておられますか?
 
太田彩子様(以下、太田):
女性活躍推進は、女性活躍推進法(2015年施行)と働き方改革関連法(2019年施行)の二大法律が成立して以来、各企業の地道な努力もあって、飛躍的に進んだと思います。
ところが、女性の「管理職」に目を向けると、各企業によってばらつきがあるというのが現状ではないでしょうか。部門による偏りもあります。
多くの企業にて、コーポレート部門やバックオフィスと呼ばれる間接部門では女性管理職の登用ならびに活躍が進んできた一方で、営業部門をはじめとした直接部門では、企業によって状況が異なります。
 
チェンジウェーブ:
エイカレでエイジョたちの話を聞いていても、企業による格差は広がっている印象があります。差がつくポイントは何だと思われますか?
 
太田
まず、「採用」に関しては、昨今の多様性重視の考え方の浸透や企業努力により、性別での違いはなくなってきました。
ところが、「定着」「活躍」となると、そこには複雑な問題が絡んできます。
ある企業の例です。入社3年後で見ると、一定数の離職があったとしても性別による違いは目立ちませんが、入社10年後で見ると、営業部門における定着は、女性のほうが有意に低い、という現象がありました。
 
チェンジウェーブ
エイカレがスタートして8年経った今でも、プログラムのキックオフとなるフォーラムでエイジョから挙がるのは「働き続けられるのか不安」「両立は難しいのでは」という声です。
 
太田:
私は、営業部門におけるジェンダーギャップ解消を目指して活動をしていますが、その差を埋めていくことはなぜ重要なのか? 2つの視点で見ていきます。
まず、現場視点で見てみると、エイカレフォーラムで出る意見(例「営業職として働き続けられるのか不安」)は、10年以上前から存在しており、2021年の今も、よく聞く悩みです。「私の営業部では、女性比率は1割~2割以下」という話はよくあることで、「ロールモデルとなるような同じ立場の女性がおらず、将来のキャリアイメージが沸かない」と悩む声は多く聞きます。女性活躍推進は、進んだと思われる一方で、10年前と変わらない課題も残っているのです。
次に、経営視点で見てみると、20216月に公表された改定コーポレートガバナンス・コードでは、人的資本経営に関する事項が盛り込まれました。ここでは、中長期的な企業の価値向上に向けた人材戦略とともに、管理職への登用等、多様性ある人材育成の重要性が説かれています。つまり、多様な人が活躍できるための施策は、もう十分、というよりも、これからがスタート、なのです。
 
その上で、営業部門における女性の定着を阻む壁は、大きく整理すると2つあると思います。
1つ目は個人の要因で、その中でも意識の問題は大きいでしょう。性別問わず個人に内在しており、自覚することが難しい潜在意識、つまりアンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)の問題は、難しい問題であると感じます。
実際に、内閣府男女共同参画局が20219月に発表した調査(1)によると、「男性は仕事をして家計を支えるべき」「育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない」といった性別役割意識は男女ともに高い、という結果が出ています。
このアンコンシャス・バイアスが潜在していると、営業現場で仕事を続けたい、と考えている女性であっても「育児中は営業の仕事は無理だと思う」のように、営業職としての就業継続をあきらめてしまう可能性もあるのです。
 
2つ目は組織の要因です。職場環境とも言い換えられますが、所属する職場が、多様な働き方を支援する制度を整備しているかどうか。また、その制度を活用しやすい風土があるかという点です。この組織の整備については、各企業の努力により飛躍的に進んできていると感じています。
 
1内閣府 令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/seibetsu_r03/02.pdf


アンコンシャス・バイアスの壁を打破するためには?

 
太田:
アンコンシャス・バイアスについては「自分にもバイアスがある」ということに「気づく」こと、会社としてできることは「教育の機会を与える」ことが大切かと思います。
アンコンシャス・バイアスはIATテスト(2)で測定できることが知られており、無意識を見える化することができます。発見するだけでも行動変容を促す効果が出ますし、それを後押しするような教育・トレーニングは非常に重要と言えます。
 
また、多様な人が活躍できる組織に向けては、教育・トレーニングを行うだけでなく、ビジネスパーソンとして成長できる機会を提供することも重要です。言い換えると、「一皮むける」経験ですこれは、今いる現状の範囲(コンフォートゾーン)からストレッチゾーンへ背を伸ばし、新たなチャレンジをしてみる機会です。ストレッチゾーンへ背を伸ばした結果として、創造や変革が生まれ、「これなら、私たちはこの先も営業職として頑張れる!」というキャリア展望につながります
 
2  IAT(Implicit Association Test)
ハーバード大学の研究者らによって開発された、アンコンシャス・バイアスの測定法
https://angle.changewave.co.jp/article/IAT_001


女性だけを対象とした研修の意義とは?

 

エイカレサミット 2019より

 
チェンジウェーブ
エイカレはまさに、エイジョのアンコンシャス・バイアスを打破し、自らが持つ課題の解決に対して「やってみる」という機会を提供する場であると考えています。
とは言っても、女性だけが参加する研修であることに抵抗感を覚える方も少なくありません。太田さんは「女性対象の研修」の意義をどのようにお考えでしょうか。
 
太田
2つの観点から重要な価値があると考えています。
1つ目は、「ポジティブアクション」という観点です。既にご存知の方も多い概念ではありますが、これまでの社内における固定的役割・育成方法にジャンダーギャップがあった場合に、そのギャップを埋めていくための施策をポジティブアクションと呼びます。
 
例えば、採用や新任配置の時点では性差が見られない一方で、数年後の定着率に性差が顕著に見られるのであれば、ポジティブアクションを打つ意義は大きいでしょう。施策がなければ、いつまで経っても差は埋まりません。女性を対象とした研修を行うことは、女性だけを優遇するのでもなく、女性だけに肩入れした施策でもありません。今ある歪みを是正する正当な取り組みです。
 
2つ目は、「ピアサポート」という観点です。
同じような境遇にいる仲間(ピア)との交流、ネットワーキングから生まれるインスピレーションからクリエイティブな発想が生まれることは、過去の研究やデータ上でも明らかとなっています。
先述したように、性別役割分担意識が根強く残っている日本において、自分とは立場の異なるビジネスパーソンのキャリアだけを聞いても、あまり参考にならないかもしれません。むしろ、同じような境遇にいる仲間同士で、「こういう生き方があるのか」と、ポジティブな刺激や新しい知見を得ること、そして支え合いながら鼓舞し合うことは、とても意義があります。
属性を問わない研修も、もちろん大切です。しかし、多様な人の活躍に関して少しでも課題があるのであれば、女性だけを対象とした研修だからこそピアサポートという効果が発揮されると思います。


営業変革と女性社員の育成~エイカレに期待すること

 

 
チェンジウェーブ
最後に、今後のエイカレに対する期待をお聞かせください。
 
太田
営業領域は、コロナ禍で大きな変化に晒されました。したがって、私たちにも急激な変革が迫られています。
営業方法はオンラインと対面のハイブリッドになりましたし、営業のプロセスにおいても、分業することが珍しくなくなりました。例えば、インサイドセールスやカスタマーサクセスと呼ばれる新しい営業上の職種も生まれ、ニーズは急拡大しています。育児や介護、治療との両立が必要な方など、多様な人がその人らしく活躍できるチャンスがやってきました。
 
こうした変化の中で、営業変革につながる実証実験を行うエイカレは、まさに今の時代に求められているプログラムと言っても過言ではないと思います。エイカレに参加される営業女性(エイジョ)には、 今の時代だからこそ出てくる、関係者すべてがハッピーになれる変革アイデアを期待しています。
 
エイカレでの実証実験を 研修だけで終わらせず、社内に展開していけば、社内にも少しずつ変化が起きることは、これまでに好事例がいくつも誕生していることからも明らかです。
将来の幹部候補者の養成という視点で見ても、まさに「一皮むける」経験をもつ女性たちが増えてくるでしょう。
教育は先行投資であるため、目先の効果がまずは気になるかもしれません。しかし、未来を創っていくのは「今」です。エイカレの先にどんな未来があるのかを、ぜひ一度想像してみていただきたいです。
 
チェンジウェーブ :
太田様、本日は貴重なお話をありがとうございました。
 
 
エイカレ 2021では、最終発表となるサミット( 2022222日午後開催)の陪席申込を現在受け付けております。
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