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「なりキリンママ」は今 
5人が始めた実験は全社展開の人事施策になった

 

新世代エイジョカレッジ(エイカレ)は 2014 年にスタートし、営業職女性のエンパワメントおよび営業変革に取り組んできました。 2021年までの参加者はのべ 137 社、 837 名。
エイカレで生まれた実証実験は、その後、会社にどのような変化をもたらしたのか。
2016年度に大賞を受賞した「なりキリンママ」チームのメンバーにお話を伺いました。
聞き手はエイカレの企画・運営を務める、株式会社チェンジウェーブ・ 執行役員の鈴木富貴です。
 


 

プロフィール

 
井尻 綾夏 氏 キリンビバレッジ株式会社 
加藤 ますみ 氏 キリンビール株式会社 
河野 文香 氏 メルシャン株式会社 
関根 優 氏 キリンホールディングス株式会社人事総務部
 


【「なりキリンママ」とは】
キリングループのエイジョが行った実証実験。エイカレ 2016で大賞を受賞した。
実験は、実際には子供がいないエイジョが 1か月間ママになりきり、時間制約のある働き方にトライするというもの。残業はせず、子どもを保育園に送り迎えする、急な病気への対応のため勤務中でも強制的に帰宅しなくてはならないなど、リアルな想定が特徴。
実験を通して、本人の意識変化、周囲との連係強化、効率的な働き方などにより労働生産性が大きく向上するという成果を挙げた。
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その後、 2019年には「なりキリンママ・パパ研修」※として対象を拡大し、研修の形で全社展開。メディアでも多数紹介された。
現在では、育児だけでなく、介護、家族の病気を含め、多様な働き方に対する理解を実体験によって深め、働き方を見直すための人事施策となっている。
 
※「なりキリンママ・パパ研修」全社展開のプレスリリース(キリン株式会社)
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2018/0201_02.html
 

「なりキリン」は個人が働き方を見直すきっかけ
「自分ごと」になったのが成功のポイント

 
チェンジウェーブ・鈴木:以下、鈴木
皆さんが取り組まれた「なりキリンママ」は素晴らしい広がりを見せておられますね。実験から5年たった今でも、メディア等の取材が続いているとも伺っています。
当時を振り返って、今、率直にどんな感想を持たれていますか?
 
加藤ますみ氏:以下、加藤
当時(2016年)は現在とは異なり、働き方に対する意識も、まだそこまで高まっていない状況でした。その中での実証実験であったため、初めは「戸惑い」が大きかったというのを覚えています。聞こえてきたのは「お客様には迷惑がかからないのか?」など、業務に関する心配の声が多数でしたから、実証実験が終わった時には、大きいことを成し遂げたというよりは「(お客様に迷惑がかからずに)無事に終えることができてよかった」とほっとしたというのが正直なところです。
 
ですが、実際に実験したことで、時間制約がある人でも工夫しだいで働けるという「気づき」が生まれました。600名以上と多くの人を巻き込んだことの意味も大きく、成果を共有できたことで、影響力も大きくなったのではないかと感じています。
 
井尻綾夏氏:以下、井尻
そうですね。今でこそ、働き方を見直さなくてはならないという意識は社会全体で高まっていますが、当時は「なりキリンママ」が、個人が働き方を見直すキッカケを担ったのではないかと思います。エイカレの後は、人事総務部主導で全社展開されるプロジェクトになりましたが、子育てをしている女性、というのは入り口です。多様な人の、多様な働き方を尊重する、という時代の変化に合わせて取組みを発展させたことが奏功していると感じています。
 
鈴木:
確かに、この5年で働き方に対する意識は大きく変わっていますよね。本日は、なりキリンママのメンバーに加え、人事総務部の関根様にもご参加いただいています。人事部門として、全社に展開されるうえで留意された点はありますか?
 
関根優様:以下、関根
現在は「なりキリンママ・パパ研修」という名称になっていますが、子育てをしているママ、パパの気持ちを知るためだけの研修ではない、ということには注意しています。
時間制約のある働き方は誰にでも起こりうることですし、「残業のない働き方は必要」という共通認識を持っていただくことがカギになってくると思います。
 


「働き方の変化」が営業現場にもたらしたもの


鈴木:
では、なりキリンママから始まった「働き方の変化」は、業績などを含め、営業現場にどんな影響を及ぼしたと思われますか?
 
河野:
なりキリンの前提として、まず、人には子育てや介護など様々なライフステージがあることを理解して、その多様性を受け入れようということがあると思います。そのためにはチームが助け合うこと、互いを理解しあうことが大切ですよね。
相互支援、業務の共有、計画性など、幾つかの要素がありますが、私自身もずっと残業なしの働き方を続けながら、首都圏で大手の酒類量販店を担当させていただき、チームで業績を上げられています。
 
また、なりキリンママ研修の全社展開と共に、営業職の女性が出産後、営業に戻ってくることが徐々に普通になってきました。社会全体の意識の高まりもあったとは思いますが、女性自身も、会社も、それを「当たり前」と捉えるようになったのも大きな変化だと考えています。
 
加藤:
やはり、多くの社員に「自分ごと」として受け取ってもらえた点が大きいのではないでしょうか。参加者が女性でも、男性でも、リーダーであっても、なくても、自分に実際に起こることとして捉えているので、この実験を「やってみよう!」となるのだと思います。
 
「なりキリンママ・パパ研修」に参加すると、自分の仕事の棚卸をしなくてはならず、その作業自体はしんどいのですが、棚卸ししたことで業務を整理することができ、結果的には業務効率化に繋がります。
また、新型コロナ感染症の拡大などで、在宅ワークといった新しい働き方になった際、管理職から「なりキリンママ・パパ実験」での経験が役立ったという感想もいただきました。「短い時間で要件を伝える」ときに心がけるポイントであったり、業務の共有の仕方であったり、全員が職場で顔を合わせないときのマネジメントであったり、です。
もちろん、営業としては、営業成績が落ちるのではというのが一番の懸念点ですが、なりキリンママ・パパ研修に参加しても数字にネガティブな影響が出ていないことも、プロジェクトが大きく展開することができた要因の一つだと考えています。
 
関根:
このほかにも、意外な効果がありました。
ある部署では、なりキリンママ・パパ研修を通して、男性社員が「子育てにきちんと関わりたい」という意思表示をスムーズにすることができたそうです。実験が模擬体験になりますし、実際の育休を有意義に取得することにつながりました。子育て等のライフイベントに関する話題も増え、職場の雰囲気づくりという意味でも、男性の育休取得の素地をつくっていくという効果があったように思います。
 
鈴木:
男性の育休取得は今後ますます加速していくと思いますが、なりキリンママ・パパ研修プロジェクトが、ここでも影響力を発揮しているのですね。
まさに時代を先取りしたプロジェクトがエイカレから生まれたことが、とても嬉しいです。今後も「なりキリンママ・パパ研修」を応援しております。本日はお忙しい中お時間いただき、誠にありがとうございました。

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