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SUMMIT2021 篠田真貴子氏 特別講演レポート #01

講演テーマ
「聴く」は自律的な営業チームに効く」

#01「聴く」ことで、営業効果が飛躍する!

 
エール株式会社
取締役
篠田 真貴子 氏
 
エール株式会社取締役。社外人材によるオンライン 1on 1を通じて、組織改革を進める企業を支援している。20203月のエール参画以前は、日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年〜2018年ほぼ日取締役CFO。退任後「ジョブレス」期間を約1年設けた。慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。人と組織の関係や女性活躍に関心を寄せ続けている。「LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる」「ALLIANCE アライアンス――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」監訳。
 
エール株式会社HP
https://www.yell4u.jp/

 

異業種で営業変革と女性社員の育成を目指すプロジェクト・新世代エイジョカレッジ(エイカレ)は、2014年のスタートから現在までに、のべ137社、837人にご参加いただいております。約半年間のプログラムの中で、参加者は自らの課題解決と営業変革につながる『実証実験』を行い、『当たり前を崩す』提言にチャレンジ。これまで数々のイノベーションを創出してきました。

そして、毎年、総括の場となる「エイカレサミット」では、皆様の知見を広げていただけるような特別講演を実施しています。2022年2月22日に開催した「エイカレサミット2021」では、株式会社エールの取締役でいらっしゃる篠田真貴子氏にご講演いただきました。

世界的なベストセラーとなったケイト・マーフィーの著書『LISTEN―知性豊かで創造力がある人になれるー』の日本語監訳を担当された篠田氏。普段私たちが行っている「聞く」ではなく、「聴く」とは何が異なるのか、「聴く」ことがいかに自律的に働くことにつながっていくのか。篠田氏にお話いただいた内容を、全3回のレポートでお届けします。

本レポート内では、「聞く」と「聴く」の2つが出てきます
話し手の語る内容を「私の考えと合っている・違う」などと判断しながら「聞く」姿勢と、聞き手がいったん自分の判断を留保して、話し手の見ている景色や感じている感覚に意識を集中させながら「聴く」姿勢のふたつがあり、後者の耳の傾け方を意識して記述している箇所は「聴く」を、それ以外は「聞く」と記載しています。

自律的に働く個人 と 自律的に働ける組織

 
企業で働いていても、個人として組織に抑圧されることなく自律的に働き続ける。
それは、1つの会社で一生働くという旧来の働き方から脱却し、転職やライフイベントによる変化があっても幸福度高く働き続けるために欠かせない、100年時代のキーでもあります。
 
これまで、日本長期信用銀行、マッキンゼー&カンパニー、ノバルティスファーマ、ネスレ、ほぼ日など、日系から外資系、大小のさまざまなタイプの組織で働いてきた経験から、「組織と人の関係」に関心を寄せ続けてきました。
ほぼ日取締役CFOを退任し、1年間のジョブレスを体験した後、現在はエール株式会社で企業が「社員が自律的に働く組織」となるサポートをしています。他社のお手伝いをするとともに、自分達も自律的に働く組織になろうと試行錯誤を繰り返している日々です。
 
これまでの組織は、KPIや営業利益など数値で測ることができる外発的動機によってマネジメントされてきました。しかし、それだけでは個人の成長、会社の成長を続けることが難しいこともわかってきています。
これからは、働く人それぞれの感情や価値観も範疇に入れた、パーパス経営やダイバーシティ&インクルージョンを大事にした経営が必須です。企業のパーパスに共感する人が集まることが、経営として目指す姿。それを、働く人々一人ひとりの内発的動機によって実現していくのが企業なのです。
 
自律的人材を育てる手段の1つとして1on1は大事です。相手の言葉を「聴く」ことが必要だからです。旧来型の上司部下面談というのは、「何をしたか」という評価だけを扱っていました。しかし、それは本当にその人の大事にしている価値や内面について「聴く」ことにはなっていません。
 
個人のパーパスと組織のパーパスは、重なることができるものです。社員一人一人が大事にしている価値や内面を「聴く」と、個人と組織のパーパスの重なりに気づきます。すると、それを実現するために一人一人に合った働き方や仕事を増やしたり、作ったりすることへとつながっていくでしょう。
 
 

篠田様ご講演投影資料01
 

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「聴く」ことが営業成績を上げる!

 
2021年夏に発売されたケイト・マーフィーの著書『LISTEN』の監訳を担当しました。
この本では「聴く」(書籍内では「聞く」)ことがいかに重要であるとともに、自然に行うのは難しいことも書かれています。
 
営業力に関する海外の研究結果26本を総括した論文によると、顧客からの信頼、柔軟な営業姿勢、顧客志向という3つの要素が、営業成果につながることがわかっています。
しかし、「聴く」ことが、これらの3つよりも一番営業成績に効くことがわかったのです。しかも、「聴く」ことが先ほどの3つの要素にも良い影響を与えることがわかっています。
力技の提案力やクロージングへの集中よりも「聴く」力を優先した方が、総合的に成果を出すということなのです。
 

篠田様投影資料02
 

学校で習わない「聴く」スキル

 
では、ここで言っている「聴く」とはなんでしょう?
より良い聴き方に意識を向けたら、コミュニケーションはきっともっと良くなっていきます。
例えば、キャッチボールで話す方が球を投げるならば、投げる方だけでなくキャッチする方の姿勢や技量がいいと、キャッチボールって長く続きますよね。
しかし、私たちは話すことへの練習は学校に通っていた頃から経験してきているのに、「聴く」練習はしてこなかったのです。
 
実は、私自身も聴くことが得意ではありませんでした。
聴くべき場面での失敗もたくさんあります。
その内容は、まず聞いているようで聞いていない。他にも、トピックをずらしてしまうような対応やついアドバイスとして自分の意見を述べてしまう。人によっては、スマホなどに気を取られてしまうようなこともありますよね。
それは、きちんと「聴いている」とは言えないのです。
 


「聴く」と「聞く」は何が違うのか

 
判断をしながら「聞く」ことと、判断を留保しながら「聴く」ことは異なります。
 
前者の「聞く」は、相手の話を自分の価値判断に照らして、自分が感じたことが表情、身振り手振り、返事に表れてしまうということです。
一方、後者の「聴く」は、判断を留保させる聴き方です。相手の言葉に対して、自分の考えを最初に出さず、判断をいっぺん留保して聞くというやり方です。
 

篠田様投影資料03

 
前者の「聞く」は話し手自身に関心が向かっていますが、後者の「聴く」では話し手の関心ごとに興味が向かっているイメージです。
 
しかし、「聞く」ことがダメなわけではありません。「聴く」と「聞く」を場面や相手によって使い分けることが重要なのです。私たちが人の話を一生懸命聞こうとする時、自然とやるのは「聞く」です。
 
そこで、ここからは「聴く」を選ぶとどうなるのかをお話ししたいと思います。
 


1.「聴く」:「聴く」ができると、異なる価値観を受け入れられる

 
「聴く」とは、ジャッジせずに相手の意見を受け入れることです。
 

篠田様投影資料03

 
自分の考えだけに集中してしまうと、相手の言葉との違いに関して否定的になってしまい、「どちらが正しいのだろう」とジャッジしがちになってしまいます。そうなると、表面にばかり意識がいってしまい、本来の価値が見えず、新しいものは生まれづらくなってしまいます。
 
しかし、「聴く」に意識を向けたコミュニケーションをすると、相手の言葉に「それはどういうことでしょう?」と興味を持てたり、互いの意見を汲んだうえで「では、何ができるか」と新たな案を考えたりすることができるのです。
 

篠田様投影資料03
 

これはまさしく組織改革に必要である「対話」です。
組織改革の第一人者である一橋大学名誉教授の伊藤邦雄先生は、「対話と会話は異なります。会話が価値観の共有を前提としているのに対し、対話は価値観が異なるかもしれないことが前提で行われている」とおっしゃっています。
対話というのは、向こう岸の人の意見をいかに聴こうとするかが重要。これはもう対話というより対「聴」と呼んでもいいのではないかと思っています。
 


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