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エイカレサミット2019
ゲストセッション 出口治明氏・特別講演レポート
#03:人×サイエンス へシフトするマネジメント。生き残るカギは「人・本・旅」で学び続けること

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2020年213日に開催された「エイカレサミット2019」では、ライフネット生命を創業され、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長でいらっしゃる出口治明氏にご講演いただきました。
 
AIの導入で営業の未来はどうなるのか。変化の時代に生き残るために必要なことをどう学ぶのか。
出口氏にお話しいただいた内容を、全3回のレポートでご紹介します。
 
 
#1はこちらから 
#2はこちらから

ITAI時代のマネジメントの切り札は【人×サイエンス】

 
実は、GAFAやユニコーンと呼ばれる企業ほど、人間を大事にする企業はない。Googleでは、人事部に申告すべき情報は、過去の職歴と、現在の仕事、今後何をやっていきたいか、の3点だけです。年齢も性別も申告する必要がないのです。なぜそうしているかというと、バイアスがかかることを防ぐためです。
 
年齢や性別の情報を知ると、バイアスがかかりやすい。心理学や脳の構造を考えて、徹底的に従業員を大事にするマネジメントをやっているから、面白いアイデアが出てくるようになり、GAFAやユニコーンは伸びていくんですよね。
 
ITやAIの時代のマネジメント切り札は、「いかに社員を大事にするか」です言い方を変えれば、「いかに社員を気持ちよく働けると思わせられるか」です。そのために、経営者や人事部の人が本気で脳の仕組みや心理学を勉強して、社員が気持ちよく働き、たくさんのアイデアが生まれる環境を作れるかどうかを競う時代になっていくでしょう。
 
世界のトップ企業のマネジメントは、サイエンスの世界にシフトしています日本生産性本部の方に聞いた話では、アメリカの学会に行けば、休憩時間は脳科学や心理学の話ばっかりだといいます。経営トップたちが、こぞってサイエンスを学んでいるんですね。
 
例えば、「面接」を考えてみても、どうすれば社員が本当のことを言ってくれるのかについて、心理学の知識がなければ分からないはずです。これに対して、日本の管理職研修では、いまだに「報・連・相が大事だ」というような精神論をやっている。これが日本と欧米の差に繋がっていると感じます。

ジェンダーギャップの解消から手をつけるべし

 
男性中心の朱子学と高度成長期の工場モデルに過剰適用してしまっている、現在の日本の歪んだ制度から脱却していくために、どこからアプローチするべきか。これには、ヨーロッパで実際に成功している明確な答えがあります。それは、女性の社会進出を図るための「クォータ制」を導入することです。
 
つまり、女性のリーダー数をトップダウンで引き上げる政策で、女性リーダーのロールモデルを作ることができます。ヨーロッパでは30年前から取り組まれていて、実際に確実な効果があると分かっています。上からやる方が大きな効果が期待できますので、意思決定層から始めた方が良いでしょう。これは永遠に続けるわけではなく、例えば10年間みたいな形で期限を決めて取り組めば良い。
 
ロールモデルがなければ人は育ちません。例えば、旅館の女将は、嫁いできた人でもできます。先代の女将をロールモデルとして、見よう見まねでやっていくうちにできるようになりますよね。人間は、ロールモデルがあって育つ、あるいは、ポストが人を作るということは、皆さんも分かっているはずです。
 
しかしながら、日本の経営者の中には、「能力のない人に下駄を履かせるわけにはいかない」という方もいらっしゃいます。それはとても歪んだ考え方で、これまでの男性中心の社会構造の中で、自分の方こそ何段も高い下駄を履かせてもらっているということに気づいていないだけ。ロールモデルやポストが人を育てるというファクトを無視しているとも言えます。実際に、下駄を履かせたヨーロッパではどうなっているかを見れば、1400時間で2%成長を遂げています。
 
クォータ制は、ロールモデルを作る運動です。適任者がいなければ、あみだくじで決めたっていいと思います。なぜなら、人間の能力はそんなに差がないからです。当たった女性が諦めて頑張れば力はついてくるし、それを見た女性が「あの人でもできるなら私でもできそう」と思えるようになっていく。これが人間の社会です。
 
有効な目標数値は、ヨーロッパの事例を見ると30%です。日本は意思決定者層の女性比率は、まだ数%です。女性推進の施策を聞いて、「また女性か」「またダイバーシティか」と言う経営者がいると聞きますが、そういうマネジメント層がいる限り、日本は欧米の成長企業には追いつけないでしょう。

AI時代でも「営業」はなくならない。(人・本・旅)で学び続けるべし

 
昨今、ITAIの話題が注目されています。しかし、僕は、どんなにITやAIが進んでも、人間を相手に商売をする限り、一番強いのは人間だと思っています。だから、これからも、営業という職種は絶対になくならない。なぜなら、人間のことを一番分かっているのは「人間」だからです。そして、人間が人間にものを売るのであれば、人間を大事にする企業が勝つと思います。
 
ITやAIがいくら進んでも、それらはただのツールです。では、営業に必要な力は何かというと、非常にシンプルで、その人の「人間力」と、その人が持つ「コンテンツ力」です。にっこり笑って来てくれるのは、1回くらいです。「この人の話は面白い」、「この人にまた会いたい」と思ってもらえるような長い人間関係を築いていくためには、コンテンツ力が絶対に必要になります。
 
そして、コンテンツ力を高めていくためには、(人・本・旅)で勉強し続けていくことつまり、いろんな人に会って話を聞き、本を読み、自分の会社から出ていろんな場所で学び続けることです。
 
新しいサービス産業を生み出すための鍵は、①女性・②ダイバーシティ・③高学歴(継続学習)の3つです。エイジョの活動は、まさにこの3つのキーワードに合致します。皆さんはこれからもぜひ(人・本・旅)で学び続けてください。

社員を大切にしない日本企業

 
日本企業が、社員を大切にしない一番の典型は「転勤制度」です。転勤の自由な総合職が一番上だとする考え方は、非人間的で極めて歪んだ思想だと感じます。これは、2つの傲慢な前提を持っています。
 
1つは、「社員にとって家は寝るだけの場所だ」と決めつけています。地域との結びつきは一切考えていません。その社員は、日曜日に子供たちに慕われているサッカーの名コーチかもしれない。もう1つは、パートナーはどうせ専業主婦だからどこにでもついてくる」という決めつけです。パートナーにも人生があり、友人や仕事があるということを無視している。転勤というのは、この2つの傲慢な前提のもとに成り立っている、極めて歪んだ制度です。ご存知かと思いますが、グローバルの企業では、転勤があるのは経営者と希望者だけです。生活を壊すわけですからね。
 
なぜ、このような極めて歪んだ制度が根付いているかというと、戦後の製造業の工場モデルの中で、人口増加と経済成長を前提に、「一括採用」・「終身雇用」・「年功序列」・「定年」というワンセットの世界のどこにもないガラパゴス的な人事制度ができてしまったことが、全ての原因です。
 
前回の記事で【タテ・ヨコ・算数】という話をしましたが、【タテ・ヨコ・算数】で見れば、現在の日本の制度は極めて歪んだ制度であることがすぐ分かるはずです。新しいサービス産業を生み出している世界のユニコーン企業が、「人を大切にする経営」にシフトしている中で、日本はまたしても大きく遅れをとっていると感じます。
  

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